身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「あー、疲れた……」



夜空に向かって思いっきり両腕を伸ばして、首をコキコキと回す。



これまでにも数え切れないぐらい、打倒platinumを掲げる暴走族から逃げたり隠れたりしてきたけれど。



追っ手の姿が見えなくなった後に味わう緊張感からの解放ほど、スッキリするものはない。



さて、邪魔者の姿が見えないうちに屋敷に行くか……。



元々、総長の西園寺(さいおんじ)如月(きさらぎ)に、「今度の集会の件で打ち合わせがしたい」と呼び出されていたし、こういったトラブルが起こったら報告するように義務付けられているし。



こんな真夜中に呼び出すぐらいなら、トークアプリのチャットでいいじゃんって思うけどね。



街灯の光を頼りに、目的地までの道をたどっていく。



人気のない静かな夜の街をしばらく一人で歩いていると、黒い鉄格子に囲まれた洋館のようなお屋敷が見えてきた。


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