身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「へぇ、棗も人間を拾ってくるとはねぇ」



理音さんが大河と棗の会話に割り込んで来た。



んん? 棗『も』?



『も』って何? まるで理音さんも人間を拾って来た過去があるとか?



ハハ、まさかね……。



心の中で苦笑いしていたちょうどその時、「懐かしいなぁ……」と理音さんが呟いた。



なんだか、昔に思いを馳せるように遠い目をしているように見える。



「なんだか昔のことを思い出すよ。僕と大河の出会いも……」



「理音さーん。今は昔話してる場合じゃないでしょ」



懐かしい思い出に浸る理音さんに注意する大河は、頭を抱えてはぁっとため息をつく。



「ったく、予定の時間が押してるのに……」



ボソッと独り言を呟く彼の顔に、『苦労』の2文字が見え隠れしている。



でも、すぐに顔を上げた彼は、怒ったお母さんのような顔をして、棗に声をかけた。



「棗。お前、ここの規則覚えてる?」



「ああ。部外者立ち入り禁止ってやつだろ。知ってるけど」



えっ? 立ち入り禁止?



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