身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「な、何ですか……?」



「会って早々で悪いけど、僕たちはここで失礼するけど、いい?」



それって、さっき大河が言ってた『予定』のこと?



「何をするんですか?」とたずねてみるものの、すぐに「話すほどたいしたことじゃないよ」とはぐらかされてしまった。



どうやら予定の内容とやらは、私には言えないような秘密らしい。



「それじゃあ、もう夜も遅いし。きみはここに泊まってゆっくり体を休めるといいよ」



「は、はい……。おやすみなさい……」



「おやすみなさい。いい夢を」



一葉さんは、横になった私の体に布団をかけると、理音さんと大河の背中を軽く叩いて、この狭い部屋を後にした。



最後に棗が、(いぶか)しむような目つきで私を一瞥(いちべつ)すると、何事もなかったかのように、この部屋の電気を消して、外側からドアを閉める。




バタンという音が、暗くなったこの空間にやけに大きく響いた気がした。



「謎が一気に増えたな……」



一葉さんが、闇夜の帝王のカズハさんなのか、そうじゃないのか。



理音さんと大河と棗が、一葉さんにとってどういう人たちなのか。



私には秘密の予定の内容とやらは一体何なのか。



聞きたいことは山ほどあるけど、今は眠くてそれどころじゃない私は、一葉さんがかけてくれた布団に包まると、ゆっくりと目を閉じた。



< 52 / 255 >

この作品をシェア

pagetop