身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「よー、日和。昨日ぶりー」



「やっと来てくれたんですね。待ってましたよ」



すぐ近くで声が聞こえたと思ったら、棗と大河が人ごみをかき分けて、私の前に現れるなり声をかけてきた。



とたんに、『何あの子⁉』と言わんばかりの女子の冷たい視線が、私の心と体にグサグサ突き刺さる。



隣にいる紗奈はというと――、「えっ? どういうこと……?」と目と口を大きく開けてポカーンとしていた。



最悪だ……。



気まずいってもんじゃない……。



数え切れないぐらいの大勢の女子から、こんなに一斉に悪い意味で注目された経験がない私は少したじろいで、通学バッグの持ち手を両手でぎゅっと握りしめた。



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