身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「私は落とし物を届けに来たって聞いてるんだけど?」



「それは後ほどお渡ししますんで。先にあの車に乗ってください」



棗の隣にいた大河が、校門の近くに横付けされた1台の車を手で差し示した。



たぶん、教室で注目の的になっていた一葉さんの車だろう。



車体が長くてつやつやしてて、いかにも漫画やドラマに出てくるお金持ちが乗ってそうな、黒塗りの高級車だ。



一葉さんって、お金持ちのお坊ちゃんなのかな……?



でも、ただでさえ悪目立ちしている今、この車に乗ったら最後。



女子の怒りの炎に油を注ぐ結果にしかならないに決まってる。


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