身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。

第5夜

「お疲れ、日和。大河も連れて来てくれてありがとう」



「日和ちゃん、学校は楽しかった?」



「一葉さんと……、理音さん⁉」



大河に抱えられたまま車に乗り込んだ私に声をかけたのは、長ソファのような座席に腰を下ろしている
一葉さんと理音さんだった。



今朝、一葉さんの口からサラッと、理音さんが幼なじみだと聞いたけど、2人は相当仲が良いんだろう。



1つの座席に隣同士仲良く横に並ぶようにして座っている。



「一葉さんがいるのはわかりますけど、理音さんも来てたんですね」



「まあね~っ。たまたま学校が早く終わったのもあるんだけど、日和ちゃんに会いたくなったから一葉に付いて来ちゃった」



理音さんはそう言って、上機嫌そうにニコニコと笑った。



その言葉に嘘偽りはなさそうし、なんなら本当に私に会えて嬉しいって気持ちが表情で伝わってくるけれど……。



「そうなんですか? 車の外から出て来なかったのに……?」



私が首をかしげると、「仕方ないよ」と一葉さんが横から理音さんを庇った。



「ただでさえあの騒ぎだったんだから。僕と理音があの場に顔を出したら、きっと大事件になってたよ」



「そうそう! こんな僕たちをスルーする女子なんて、この世に一人もいないからね!」



ふーん? そうなんだ……?



否定したら面倒くさいからそういうことにしておこう。



なんて心の中で呟いていると、大河が私をすぐ近くの、誰も座っていない座席の真ん中に降ろした。



上質でふかふかなシートにそれから右側を棗、左側を大河にはさまれてしまう。



……何だろう。囚われの身になったような感じがするのは気のせいかな。
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