身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「あのっ、一葉さん」



私はグラスに残った紅茶を一気に飲み干して、一葉さんにずいっと詰め寄った。



「落とし物を届けに来たって聞いたんですけど、早く返してくれません⁉」



手のひらを上にして、彼に向かってぐんと突き付ける。



「そんなに急かさなくても、ちゃんと持ってきてるよ」



はいどうぞ、と一葉さんは制服のポケットから取り出したものを、私の手に乗せてくれた。



それは、手のひらに収まるぐらいの小さな紙袋だった。



「わざわざ包んでくれたんですか……?」



「一応、礼儀としてね」



「ありがとう、ございます……」



正直、そのままポンッと現物を渡されると思ってたけど、想像以上に丁寧な対応をされて拍子抜けしてしてしまった。



とりあえず、中に何が入っているのか確認しなきゃ。



急いで封を解いて、手のひらの上で紙袋を傾ける。



すると、ピンキーリングに細いチェーンを通したペンダントがしゃらっと出てきた。






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