身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「これ……、私がなくしたペンダント……。どこにあったんですか⁉︎」



「ベッドの下に落ちてたよ」



なるほど……。



「僕が見つけて渡そうとしたんだけど、きみは何も聞かずにそのまま走り去っていったの、覚えてる?」



「はい……、すみません……」



今朝、一葉さんが私を引き止めたのは、このペンダントを拾って、渡そうとしたからだったんだ。



なのに私は……遅刻するかもしれないと、ろくに彼の話も聞かずに部屋を飛び出して――……。



まあ、急いでいたから仕方なかったのもあるけどさ……。



気を取り直して、早速ペンダントを首にかける。



すると、ざわざわとしていた気持ちが、ゆっくりと落ち着きを取り戻していった。



自然と、ほっと安堵のため息が出る。



「それ、君の大切なものだったんだね」



一葉さんの優しい声色に、目頭に熱いものがこみ上げてくる。



私はそれをごまかすように、下を向いてこくんとうなずいた。



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