身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
このペンダントトップのピンキーリングは、生前の両親が私に贈ってくれた最後のバースデープレゼントなんだ。



5年前。



当時小学6年生だった私のクラスでは、女子の間で願掛けにピンキーリングを身に着けるのが流行っていた。



この時の私には特に叶えたい願いはなくて、おまじないどころかアクセサリーにもあまり興味も持っていなかったけど。



小指に華奢なデザインのリングをする同じクラスの女子たちを毎日見ていると、不思議とその子たちが大人っぽく見えて。



両親に「誕生日プレゼントは絶対にピンキーリングがいい! お願い!」とねだって買ってもらったんだ。



……まあ、その後すぐにホームルームでアクセサリー着用禁止のお達しが出たせいで、私は完全に流行に乗り遅れてしまったんだけど。



そんな、嬉しくもほろ苦い思い出が詰まったピンキーリングは、今はもうサイズアウトして私の小指に入らない。



プレゼントしてくれた両親も、私が中学1年生の時に交通事故に遭って、この世を去ってしまった。



でも、今でも私と両親を繋ぐ大切な宝物として、私はリングの穴にチェーンを通し、ペンダントとして肌身離さず身に着けている。



今朝、一葉さんがベッドの下にこのペンダントが落ちているのを見つけなかったら。



もっといえば昨日、一葉さんと出会った時に、私が自分の名前を教えていなかったら。



きっとこのペンダントは、永遠に私の元に戻って来ることはなかったかもしれない。



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