身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「そっか。だから昨日、棗は私の顔をずっと気にしてじろじろ見てたってわけね……」



「まーな。でも、お前は桐生と桜坂で全然名字が違うし、外見も別人レベルに変わってるし……実のところ、本当にお前が桐生ひよりなのかどうか、疑わしくてさ」



たしかに、引っ越す前の私は、黒髪ストレートのロングヘアだったけど。



今は髪を淡いミルクティー色に染めて、毛先だけをゆるく巻いたセミロングにしている。



もし、platinumがこの街に来ても気付かれないように、念のためにガラッと髪型を変えたんだ。



……まあ、引っ越したことでノアの外見に合わせる必要がなくなったというか。



如月に『絶対にヘアスタイルを変えるな』と強いられてきた反動で、『髪を染めるなら絶対に明るい色にする』って決めていたし、私には長過ぎてうざく感じていたから、っていうのもあるんだけど。



「じゃあ……この話をするために、わざわざ私を車に乗せたってわけ?」



「ああ。昨日の夜、お前が寝た後に俺たち4人の間で、『頃合いを見て、本人に直接聞いて確かめてみよう』って話がまとまってな」



「そうなんだ……」



「まさかそのタイミングが、こんなにも早くくるとは思ってもみなかったけど」



「…………」



ああ、そうか。



だから、一葉さんは私の落とし物を届けるだけで済むところに、わざわざ理音さんと棗と大河を連れて来たんだ。



私が断っても車に乗せろと大河に命令したのも、ここでこの話をするために――……。



今になって、パズルのピースが綺麗にはまったようにつじつまが合う。



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