婚約者に捨てられた夜、八歳年下の幼馴染みにプロポーズされました。
 それからすぐに私のスマホにピコピコ通知が入る。消音(ミュート)しているけど画面に通知は出る。
 メッセージアプリの通知が10件、20件。

 悪かった。許せ。やり直してやる。またお前の作るナポリタンを食べたい。etc。

 一馬にナポリタンを作ってやったことは一度もない。
 たぶんそれ、リンちゃんでしょ。
 そっとブロックボタンを押して仕事を続ける。


 昼休みを静かに過ごせるわけもなく、また席に来た。

「なんで既読にならないんだよ。機嫌直せって、な。いまどきツンデレは流行らないぞ」
「なんで仕事中にメッセージアプリで遊んでいるんですか」

 私の隣にいる飯名先輩も白い目だ。

「なんで堂々と浮気して、佐藤さんとよりを戻せると思っているの。わたし、旦那にそんなことさ休みれたら秒で離婚するわ」
「うぐ」

 自分の席に戻っていったけど、昼休憩中ずっと恨めしそうな目でこっちを見ているから、食べにくいことこの上なかった。外に食べに出たら出たで店についてきそうだし、嫌だな。

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