婚約者に捨てられた夜、八歳年下の幼馴染みにプロポーズされました。
 温かなお茶を用意してくれて、ありがたくいただく。

 ロングソファの隣に健人が座って、私を促す。

「なにかあったの」
「……婚約破棄された」

 去年の今頃、結婚式は来年春頃にしようか、なんて言っていたのに。横戸が入社してきてから全部崩れてしまった。
 積もった怒りや、さっきあったことを全部吐き出した。
 たぶん混乱しているから時系列がめちゃくちゃで、言っていることを理解しづら買ったと思う。
 こんなの、多感な時期の高三男子に話すことじゃないのはわかっているのに、どうしても止まらなかった。

「もう、消えちゃいたい」

 浮気しといて百万円で婚約をなかったことにしろなんて、ひどすぎる。
 涙が止まらなくてしゃくりあげて、そんな私を健人が抱きしめた。

 骨がきしんでしまうんじゃないかと思うくらいに強く。
 初めて出会ったときはまだ小二で、私よりもずいぶんと背が低かった。お隣りに引っ越してきた可愛い男の子という感じだったのに。

 その健人が私より背が高くなり、胸板も厚くなっていて、私を抱きしめている。
 いつの間にこんなに大きくなっていたんだろう。
 あたたかい。力強い。
 安心する。
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