王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜

その人は突然に

 その日。

 フォルクローレ伯爵家はバタバタと忙しかった。
 小走りで廊下を行き交うメイド達。サイドボードには並べられたアクセサリー。屋敷中にたちこめる華やかな香水の香り。

「皆、準備は出来たわね? じゃあリセ、行ってくるけれど……本当に留守番するの?」
「今更だわ、お母様。ペルラ姉様もマリナも、舞踏会楽しんできて」

 父と母。姉ペルラと妹マリナ。

 フォルクローレ家三姉妹の次女であるリセは、正装に身を包んだ家族達を笑顔で見送った。皆は手を振るリセを気遣いつつも、ぞろぞろと連れ立って馬車へと乗り込んでいく。



 後に残ったのは、アクセサリーや着付道具でごった返した部屋。リセはメイド達と一緒に、部屋を片付けることにした。

「リセお嬢様、よろしいのですよ。私達でやりますから」
「いいのいいの。皆で片付けたほうが早いでしょう。それに後でお楽しみが待っているんだから」

 どんどん片付けを進めるリセは、どことなく楽しそうだった。小一時間ほど片付けや掃除を続けると、ようやく部屋が元の姿を取り戻した。
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