王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜
「やっと片付いてきたわね。クラベルお疲れ様、私達はそろそろお茶にしましょ」

 メイド長のクラベルは、三人分の着付をした今日一番の功労者。頭も身体も疲れたに違いない。彼女にも休息が必要だ。

「ええ、すぐにお茶をお持ちします。……ですが、本当によかったのですか? リセお嬢様だけ留守番など」
「パートナーがいないんだから、私が行っても仕方ないわよ。お茶は別の者に頼むから、クラベルはとりあえず座って」

 リセは、クラベルを無理矢理ソファに座らせて。お茶は他のメイドに頼み、自分はというとチェストから小ぶりな缶を取り出した。
 いたずら顔で勿体ぶりながら、その缶の蓋を開けてみれば……それは豊かな香りのチョコレート。

「まあリセお嬢様! これは」
「こっそり取っておいたチョコレートなの。今日、皆が行ったあとでクラベルと食べようと思って」
「これ……奥様が楽しみにしていたチョコレートじゃないですか!」

 母は甘いものに目がなかった。評判のお菓子を片っ端から取り寄せてはお茶会に持ち寄るのが趣味のような人で。

「お母様には話を通してあるし、皆お城で美味しいものを食べてくるのだから大丈夫よ。ほらクラベル口を開けて」

 リセはチョコレートを一粒つまむと、クラベルの口へと放り込んだ。不意打ちで口の中へとチョコレートが飛び込んできたクラベルは、驚きながらもその美味しさに目を細める。
 リセもチョコレートを一粒頬張ると、その甘さにうっとりと目を閉じた。
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