王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜
 ごった返す、お昼時の食堂。
 リセは二人分の席を確保するとクルトを席まで案内し、自身は注文口の行列に並ぼうと立ち上がった。

「クルト様はこちらでお待ち下さい。私が持ってまいりますので……」
「いや、いい。俺も行こう」
「えっ」

 クルトがパチンと指を鳴らすと、どこからともなく護衛らしき男が現れた。一体、どこにいたというのだろう。

「席は彼に任せるといい。行くぞ」
「は、はあ……」

 妙な光景だった。
 ディアマンテ王国の第二王子が、トレーを持って食堂の行列に並んでいる。それを恐る恐る見守る生徒達。
 
 背後にクルトの気配を感じながら、先に並んだリセは縮み上がっていた。
 学園でのクルトの様子というのは……このようなことも報告されるのだろうか。父の深いため息が聞こえてくる気がする。

「リセ」
「はい、なんでしょうか」

 恐る恐るクルトを振り返ると、彼は食堂のメニューを眺めていた。

「どれが旨い?」

 今日のランチは、チキン・パスタ・シチューの三種類。どれが旨いかと聞かれたら……

「一番人気があるのはパスタでしょうか。ソースがとっても濃厚で美味しいと評判なので」
「リセが選ぶのはどれだ」
「私はチキンにしようと思っています」

 チキンがメインの時は、付け合わせにレバーのパテがついてくるのだ。リセはそれが好きで、いつもチキンの日を楽しみに待っていた。

「では、俺もそれでいい」
「……少し、クセが強い味ですよ?」
「でもリセは好きなのだろう」
「はい、大好きです」
「リセが好きな物は大抵旨いと決まっている」

 クルトはそう言うと、さっさとチキンの皿を取ってしまった。
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