王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜
「クルト様。初日、大変お疲れ様でした」

 やっとこの日最後の講義が終わり、長かったようで短かったような登校初日が終わろうとしている。
 門前へ迎えに来た王家の馬車が、クルトを待っていた。リセは今日という一日を無事に終えたことで、とりあえずはホッと胸を撫で下ろした。

「ああ。では帰るか」
「え、私もですか?」
「行くぞ」

 どうやら帰りも同乗することになるらしい。この、王家の馬車に。
 リセの背中に、周りの視線が突き刺さる。しかし『早く乗れ』というクルトの視線も刺さってくる。

 リセは観念して馬車へと乗り込んだ。パタリと扉が閉じられると、そこにはクルトとリセだけの空間が出来上がる。

 クルトは何も話さない。さすがに疲れたのかもしれない。
 (私も、話しかけないほうがいいかな……)

 しん……と静かな、馬車の中。
 馬車の心地よい揺れ。適度な疲労感。

 まぶたが重い。頭が揺れる……。


 リセは最後の最後でやってしまった。
 大失態を犯してしまったのだった。




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