王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜

国の思惑

「んん……?」


 まぶたを開くと、そこはリセの部屋だった。リセは制服のまま、ベッドに横になっていたようだ。
 窓の外はもう暗い。いつの間にここまで来たのだろう。つい先程まで、クルトと馬車に乗っていたはずで……

 リセの脳裏に段々と記憶がよみがえる。
 指先が冷たくなってゆく。

「まさか、私……」
「リセお嬢様!」

 メイド長のクラベルがバタバタと部屋へとなだれ込んできた。

「お目覚めになりましたか」
「クラベル……私、どうしよう」
「どうしようと仰られましても……」

 リセは理解した。王家の馬車で下校中……クルトと同乗しているにも関わらず、あまりの心地良さに寝落ちしてしまったのだと。

 己の愚かさに泣きたくなる。粗相せぬよう、気を引き締めたつもりだったのに。最後の最後で気が緩んだ。一日を無事に過ごせて安心しきってしまったのだ。

「驚きましたよ。リセお嬢様を抱えたクルト殿下がいらっしゃった時は」
「抱えた?! クルト様が?」

 しかもリセをここまで抱えて運んでくれたのは、よりにもよってクルトらしい。それに気づかぬくらい熟睡していたというのも、とんでもないことだ。
 初日からやってしまった。このことは、やはり父にも報告されているのだろうか……
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