王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜
「クルト様。提案があるのですが」
「なんだ」
「他生徒達とも交流を広げてみてはいかがでしょうか」

 昨日に引き続き、二人は食堂へやって来た。
 テーブルの上には本日選んだメニュー、ミートパイと琥珀色のスープが湯気を立てている。

「……何のつもりだ」
「昨日は一日中、私と居ただけで終わってしまいました。せっかくエスメラルダへ留学にいらっしゃったのですから、他生徒ともお話をと思いまして」

 クルトからの刺さるような視線に負けじと、リセは言葉を続けた。

 考えたのだ。
 十年前、クルトと一番近しい関係にあったのがリセだった。そのため今も世話役として頼み込まれ、クルトの隣へ立っている。

 もし十年前、あのお茶会で彼がもっと交友関係を築いていたなら。七歳のリセがクルトを独り占めせず、彼がもっと広い世界を見ていたなら……

 今、ここには違う令嬢が座っていたかもしれない。クルトの隣には、相応の洗練された令嬢が立っていたのかもしれないと。

「具体的にはどのように」
「ええと……スポーツなどはいかがでしょうか。共に身体を動かせば、仲も深まると申しますし」
「そうか、スポーツか……」
「今、エスメラルダではテニスが人気でして。きっと皆でやれば楽しいと思います」
「……テニスなら分かる。やってみよう」

 クルトは意外にもすんなり話に乗った。彼も、周りに目を向けてみようと思ってくれたのかもしれない。
 ちょうどランチを食べ終われば昼休憩だった。校庭のテニスコートでは、生徒達がテニスを楽しむことだろう。
 リセとクルトは、ランチの後テニスコートへ寄ってみることにした。
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