王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜
「クルト様、もう少し手加減をしませんと」
「手加減されて嬉しい者などいるのか」

 確かにそうかもしれないが……クルトと生徒達では、実力の差があり過ぎた。
 しかも今回の目的は生徒達との親睦を深めることだ。勝負の為では無い。しかしこの調子では、またテニスをしたとして結果は同じものになるだろう。

 親睦を深めるため何か他にも方法は無いだろうかと考えたとき、音楽室から楽器の音色が聞こえてきた。
 そうだ、これならどうだろう。

「クルト様。皆の演奏に参加されてはいかがでしょう?」
「演奏とは?」
「我が学園には生徒達で運営する管弦楽団がありまして。放課後は毎日練習しておりますので、そちらに顔を出されてみては? 皆で演奏すれば、きっと楽しいと思います」
「……バイオリンなら分かる。やってみよう」

 皆と一体となって音楽を奏でれば、仲も深まるというものだ。
 なんていい考えなのだろう。リセとクルトは、放課後の音楽室へ顔を出すことにした。
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