王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜
 静かな音楽室に、バイオリンが鳴り響く。

 艶のある音色が歌うように旋律を奏でれば、管弦楽団の生徒達はその音色に聞き惚れた。

 クルトの弓がゆっくりと弦から離れると、演奏の余韻を残したまま音楽室に静寂が訪れる。
 そして……一拍置くと、音楽室は拍手喝采に包まれた。

「素晴らしい!」
「クルト殿下!」
「アンコール!」

 精鋭であるはずの楽団員達が、クルトのソロ演奏の虜となってしまった。
 リセはまた冷や汗をかいた。こんなはずでは無かったのに。皆で一緒に合奏を楽しむことが出来たなら、と……

 楽団員達に取り囲まれるクルトを、リセは離れた場所から眺めていた。ある意味、親睦を深める事には成功しているのだろうか。

「皆、楽しかった。礼を言う」

 クルトは楽団員達に向かって声をかけると、音楽室を後にする。
「し、失礼いたします」
 リセも生徒達に深く頭を下げたあと、急いでクルトの後を追った。



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