王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜
 部屋の入口に、青年が立っていた。

 正装を纏った青年。
 涼しげな目元に、赤い髪。

 

 リセとクラベルは固まった。

「リセお嬢様、まさかあの方」
「うそ……」

 二人は微動だにせず、赤髪の青年を見るしかなかった。信じられない。まるで、今クラベルに語ったばかりの『将来を誓い合った男』……そのものではないか。
 
 彼はリセと目を合わせた途端、こちらへと迷いなく歩いてくる。
 (うそ、うそ……)
 近付いてくると分かった。彼の顔には面影が残っている。
 十年前の、あの少年の泣きボクロ。
 


「リセ」

 男はリセの目の前に立つと、彼女の名を呼んだ。それは明らかに馴染みの呼び方。

「クルト……」

 リセを見下ろす彼は、まぎれもなく『将来を誓い合った男』だった。

 まさか、また会う日がくるなんて。
 
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