王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜

国のためにも

「なぜお前がここにいる」
「そんな怖い顔しないで下さいよ」


 昼休憩の食堂。

 今日選んだメニューはポテトと玉子のグラタンで。
 リセとクルトが二人、いつものように確保しておいた席へと戻ってみれば、なんと隣にはセリオンが座っていた。
 彼の前にも、湯気を立てるグラタンがひとつ。
 
「グラタンですね! 俺も今日はグラタンにしたんです。奇遇だな」
「ちょっと、セリオン……あなた、ここで何してるの」
「リセ、酷いな。俺はクルト殿下へ謝りに来たのに」

 セリオンは相変わらず良く分からない笑みを浮かべたまま、グラタンの玉子をトロリと割った。
 どうやら席を立つ気は無い様子だ。リセとクルトも、諦めて席へと着いた。

「どういうことだ」
「俺は殿下を挑発するような真似をしましたから」

 彼が謝ろうとしているのは、リセの手を握ったり肩を抱いたりしてクルトを刺激したことだろう。
 セリオンにも一応、謝罪すべきことをしたという自覚はあったのか……リセは逆に驚いた。

 クルトの鋭い目はずっとセリオンを睨みつけたまま。この視線を受けながらも平然とグラタンを頬張るセリオン。やっぱり彼のことは到底理解出来そうにない。
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