王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜
「リセ、よかったね」

 昼休み、いつものテニスコート。
 リセの隣には当たり前のようにセリオンが立っていて、二人は一緒にクルトのテニスを眺めている。

「……よかったのかしら」

 クルトがリセを抱え、コートを立ち去ったあの一件以来、侯爵令嬢シルエラ達のあからさまなアプローチは無くなった。
 ただ依然としてクルトの人気は健在で、彼の周りには多くの生徒達が群がっている。

「何を悩んでいるのさ」
「……私でいいのかなって」
「いいのかなって……誰よりもクルト殿下本人がそれを望んでいるじゃない」

 セリオンはクルトと約束した通り、リセに触れたりということはなくなった。ああやって手を握ったり肩を抱いたりもされたが、彼は純粋にクルトとリセの応援をしていたつもりのようだった。

「リセは嫌なの?」
「え?」
「クルト殿下との婚約が」
「……嫌なわけでは……」
「ほんとリセって何様なの。何がそんなに不満なの」

 リセのなんともはっきりしない態度に、セリオンはイライラとしているのだろう。言葉にトゲがあり、そのトゲがリセの胸にグサグサと突き刺さる。
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