彼は推しと瓜二つ
音は店の外に出ていった学生達を目で追った
音(ちゃんとしっかり謝れよ…ってか何も買わねーんかい!) 


音は学生達が見えなくなってから、男性客の方を振り向いた

相変わらず男は下を向いたまま

音(近くで見るとやっぱりMITSUKIにそっくり…配信をしていなかったら、私だって本人だと思ってしまう。
別人だとは思っても、近くにいると何かすごく緊張しちゃう……だめだ私、仕事仕事……)

音「お客さま、大丈夫ですか?…もし余計なお世話でしたら申し訳ありません…」

音は冷静を装いながら目の前の客に対応する

男性客「いえ、とても助かりました。ありがとうございます。」

その時初めて彼は顔を上げて、音の方を見た。
礼を言ってからフードも外し、深々とお辞儀をする。

フードに隠れていた、少しウェーブがかった茶髪のマッシュショートの髪が現れる。
セットしていないラフな状態

音(ヒッ‼︎意外と礼儀正しい……!
いや、ってか、本当にMITSUKIじゃん?!
え、ちょ、待って、マジで髪型もそのままなんですけど、え、嘘、無理……何で)

音は冷静を装うのに必死だ

男性客「goalがライブ配信中だってよく知ってましたね」

男は音を見て微笑んだ

音(待って、その笑顔やばい!!MITSUKIそっくりすぎるってーーー!)


音「先ほどのお客様に話した通り、私はgoalのファンなので……休憩時間が終わる頃に始まってしまって、出だししか見れてませんが…」

男は小さく笑った
男「それは残念でしたが、おかげで助かりました。」

音「あの……失礼を承知で言わせていただくんですが…
お客様はアイドルのMITSUKIさんにとてもよく似ていらっしゃいますし、スーパーみたいに多様な人が集まる場所では、同じ服装は控えた方がよろしいかと…」

男「え?」

男は眉間に皺を寄せて音を見た。
音は怯みそうになるのを堪え、真っ直ぐ男の方を見て言い続ける

音「私がお客様の服装に口を出せる様な立場では無いのは重々承知しております。
ただ、今日の方達はすぐに引いてくれましたが、皆がそうとも限りませんし…お店としてもお客様にはぜひまた来て頂いて、安全にお買い物をして欲しいと思っていますので。」

男「…あの…さっきのヤツらも言ってたんですけど、その、同じ服装ってのは…?」

男は本当に分かっていない様子

音「え…っと、そちらと同じ服装をしたMITSUKIさんの写真が、以前goalの公式アカウントに上がっていたんです。
練習着以外の私服姿って貴重だったので、トレンドに入るほどファンの中でもすごい話題になって……」

男「あー…まじか………。
すみません、今後は気をつけます。」

音「いえ…服装にまで気をつけなきゃいけないのは大変ですよね…」

男は愛想笑いをした

音(MITSUKIを真似て同じ服装をしたわけではないって事…?ここまでそっくりで、ただの偶然なんてありえるの?)


音の頭の中は混乱する
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