彼は推しと瓜二つ
光之「…お帰り。電話してからだいぶ経ってるけど、どこ行ってたの?スーパーだってとっくに閉まってるのに。」

トーンは優しいが、不満そうな様子は伝わってくる。

雅之「……その、……光之………

ごめん!!!!!」

雅之は勢いよく頭を下げる

光之「え?……どうしたの?何があった?」

雅之は今日の一連の出来事を光之に説明する


雅之「…もうヘマはしないって約束したのに…また俺の不注意で……謝って済む問題じゃないのは分かってるけど…ほんとごめん。」


光之「……店員に勘付かれたのは俺の責任もあるし、雅之だけの責任ではないよ。
…でも何で?何で俺らの事を全て話しちゃったんだよ!!話す必要なんてないだろ!!
向こうはMITSUKIのファンだぞ?今まで騙されてた事に逆上してネットで拡散したり週刊誌に売る可能性だってある。
ちょっと店で関わったからって、何の関係もないやつに……美人だからってほだされたのか?!」

光之は雅之の肩を強くつかんで言い迫る。
感情を抑えられない様子


雅之「……確かに杉山さんは綺麗だし、好意が全く無かったと言えば嘘になる。
でも、杉山さんはそこらの常識のない奴らとは違う!!俺らの事を本気で心配してくれていたし、俺は杉山さんなら大丈夫だと思ったから話した。決してほだされたからとかじゃない!!」

光之「たった数回会っただけの人の事なんて、分かるわけないだろ!!
始めは普通のファンだと思ってた人も、段々と行き過ぎた行動をとるようになったり、ちょっとした俺達の言動でさえ、切り取ってネットを炎上させる奴も沢山いる。心配してるフリして、心の中じゃ何を思ってるか……」

雅之「たった数回でも分かるんだよ。
この世界で生きてたら、本音と建前くらい見分けがつくさ。
それに杉山さんは俺らの事を探っていたわけじゃない。
彼女は知りたくて知ったんじゃなくて、俺が勘付かせるような事をしてしまったんだ。
被害者である彼女に対して、そのままモヤモヤさせておくのも酷だし、俺には説明責任があると思ったから…。」


光之「……だからって、全て言う必要は無かっただろ………。」

光之は雅之の肩から手を離し、その場で項垂れる。


雅之「……他に最善策が思い付かなかった……迷惑かけてかけて本当ごめん……。」


光之「……とりあえず今回の事は事務所に報告しておくけど……俺らはきっともう、終わりだな……。」


光之はゆっくり立ち上がり、雅之の方を見る事もなく、自分の部屋に向かう。

雅之「……俺は、杉山さんを信じてる…。」

光之は振り返る事も反応をする事もなく、そのまま部屋の中へと入る


雅之「………大丈夫、絶対に……」



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