彼は推しと瓜二つ
尾形と門倉が音に聞こえないようにコソコソと話していると、加藤が2人に近づき、尾形の耳元で話し始める。


加藤「昼頃に杉山さんに対しての個人的な電話が来てたんだけどね、何か深刻そうだったの。お店に男関係のトラブルを持ち出して来ないと良いんだけどねぇ。」 


尾形「…そうですか……。」

加藤は喰いついてこない尾形に、つまらないとばかりにその場をすぐ立ち去る


門倉「……何も反応しないなんて珍しい。」

尾形「あの人の話はどこかトゲがあるというか、何か嫌味っぽいから、一緒にはされたくないの。」

門倉「…そこだけは意見が合うようだな。」


◯17時
音は退勤時間となり、身支度を済ませ、急いで裏口から外へと出る


?「杉山音さんですか?私GKLプロダクションの白川です。MITSUKIの担当をしています。
どうぞ、駐車場に車を停めているので。」

音「はい…よろしくお願いします。」

音は不安ながら白川に着いて行き、車の後部座席に乗る。
車は外から中が見えないスモークガラスとなっている。


白川「今日はお仕事終わりなのに、急きょ対応して頂いてありがとうございます。」

音「いえ、出来るだけ早い方が良いとは思うので…。
明日は仕事も休みですし。」


白川「あ、そうなんですね!それは良かったです。」


白川はルームミラーから音の顔をジッと見る。
音は緊張でやや俯き気味だったため、気付いていない。


白川「…杉山さんって、何かモデルとかインフルエンサー的な事されてるんですか?」


音「え?いえ…今は全く何も…。
学生の時に読者モデルは少ししていましたが…。」


白川「そうだったんですか!杉山さんなら事務所からの誘いもありそうですけど、そのままモデルや芸能界の道に行こうとは思わなかったんですか?」

音「……ありがたい事にお誘いはあったんですが、とても家族にやりたいとは言えなくて…。
それに、性格的にも自分には向いてなかったと思います。」

白川「あぁ…なるほど。まぁ、親としては真っ当な職業に就いて欲しいって思いますよね。」


音「……そうなんですかね………」

白川「……?。ちなみに、読者モデルってどの雑誌でされてたんですか?」

音「えっと…ナインティーンっていう雑誌です。」


白川「おぉ!すごい有名な雑誌じゃないですか。
goalも出た事ありますし。」


音「……はい…知ってます………。」

(車の中では昨日の事には触れないみたい…。)

他愛もない話をしているうちに、車はオフィスの前に到着する。

音(まさかこんな形でgoalの事務所に来る事になるなんて……)

白川「到着しました。では、どうぞ。」

白川は外から車のドアを開けて、音をビルの中へと誘導する。

音はgoalの所属事務所に入るという興奮と、これからどうなるのか分からない不安とが入り混じっている状況で、ゆっくりと足を踏み込んだ。

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