彼は推しと瓜二つ
◯事務所の応接室
音が白川に促されて室内に入ると、スーツ姿の中年男性と、雅之、光之の2人が並んでソファに座っている。
雅之は軽く手を上げ、にこやかに音の方を見るが、光之は俯いて、音の方を見ていない。
音(…2人が並んでいると、やっぱり双子なんだって実感するな……。本当そっくりすぎる…。)
高橋「今日はお疲れの所、お越しいただきありがとうございます。私がお電話いたしました、goalチーフマネの高橋です。本日はよろしくお願いします。」
高橋は立ち上がり、音に名刺を渡す。
音「いえ、こちらこそよろしくお願いします。」
高橋「どうぞおかけください。」
音「では失礼します…」
高橋「早速ですが、本題に入らせてもらいますね。
杉山さんもお疲れでしょうし、長々と行う予定はありませんので。」
音「…はい。この度は、私のせいで本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。それで…」
高橋「ちょっと待ってください。
私達は別に杉山さんを責め立てて謝罪させるためにお呼びしたわけではありません。
それに、今回の件で悪いのは杉山さんではなくコイツらなので。」
高橋はそう言うと、隣に並んで座っている2人の肩を軽く叩いた。
高橋「今回の事は杉山さんに安易に近づき、ファンの方であればすぐ気付いてしまうような言動をとっていた2人に原因があります。
それに気付かれたとして、全て話しちゃう必要もあったのかどうか…。」
高橋は雅之を冷めた目で見る。
雅之「すみません……」
高橋「本当に、むしろ謝らなければならないのはこちらの方です。
杉山さんの様なファンの方々を騙し続けていたのですから…。」
音「いえ。2人でされている事情もお聞きしたので、それで騙されたなんて腹を立てる事はありません。」
高橋「そうですか…ありがとうございます。
MITSUKIの事に関しては、事務所でも一部の人間しか知らない事なんです。メンバーでさえも。」
音「え、メンバーでも?」
高橋「えぇ。グループの都合上、リーダーのJUNにだけ伝えてはいますが。
1人だけなら、もし週刊誌にリークされたとしてもすぐに誰がしたのか分かりますし…。
それほどまでに我々は秘密を大事に守ってきたつもりです。
もしも世間にバレるような事態になれば、全てがパーになってしまう。
MITSUKIの芸能生活も終わってしまうかもしれない。
けど、こんなにも外見と才能に恵まれたアイドルをここで終わりになんてしたくありません!
勝手ながらどうか、この事は墓場まで持っていくつもりで、秘密を守っていただきたいのです。」
高橋は深く頭を下げ、それに続いて光之と雅之も頭を深く下げた。
音「もちろん、そのつもりです!
昨日お話を聞いてから、その覚悟はできていました。」
雅之は嬉しいそうな顔で音を見つめるが、光之は複雑そうな表情で、未だに俯いている。
高橋「ありがとうございます…。
杉山さんを信じていないわけでは無いのですが…念の為SNSのアカウントもチェックさせて頂いてよろしいでしょうか…?」
雅之「は?そんな監視するような真似っ…!」
光之「…お前に怒る権利はない。それに口約束だけで済むわけないだろ。」
音「……大丈夫です。えっと…これとこれと……」
音はスマホを取り出して高橋にアカウントを確認させる。
高橋「…ほとんど見る専用で、投稿はしていないんですね…。別のアカウントも無いですか?」
高橋は念入りにチェックをし、音は正直に答えている。
雅之はもどかしそうに、両手の拳を強く握りしめている。
高橋「ありがとうございます。では、最後に今回のお詫びといいますか、お礼も兼ねて、こちらをお渡しします。」
白川「どうぞ。」
音の目の前に出されたのはgoalのライブチケットだった。
音が白川に促されて室内に入ると、スーツ姿の中年男性と、雅之、光之の2人が並んでソファに座っている。
雅之は軽く手を上げ、にこやかに音の方を見るが、光之は俯いて、音の方を見ていない。
音(…2人が並んでいると、やっぱり双子なんだって実感するな……。本当そっくりすぎる…。)
高橋「今日はお疲れの所、お越しいただきありがとうございます。私がお電話いたしました、goalチーフマネの高橋です。本日はよろしくお願いします。」
高橋は立ち上がり、音に名刺を渡す。
音「いえ、こちらこそよろしくお願いします。」
高橋「どうぞおかけください。」
音「では失礼します…」
高橋「早速ですが、本題に入らせてもらいますね。
杉山さんもお疲れでしょうし、長々と行う予定はありませんので。」
音「…はい。この度は、私のせいで本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。それで…」
高橋「ちょっと待ってください。
私達は別に杉山さんを責め立てて謝罪させるためにお呼びしたわけではありません。
それに、今回の件で悪いのは杉山さんではなくコイツらなので。」
高橋はそう言うと、隣に並んで座っている2人の肩を軽く叩いた。
高橋「今回の事は杉山さんに安易に近づき、ファンの方であればすぐ気付いてしまうような言動をとっていた2人に原因があります。
それに気付かれたとして、全て話しちゃう必要もあったのかどうか…。」
高橋は雅之を冷めた目で見る。
雅之「すみません……」
高橋「本当に、むしろ謝らなければならないのはこちらの方です。
杉山さんの様なファンの方々を騙し続けていたのですから…。」
音「いえ。2人でされている事情もお聞きしたので、それで騙されたなんて腹を立てる事はありません。」
高橋「そうですか…ありがとうございます。
MITSUKIの事に関しては、事務所でも一部の人間しか知らない事なんです。メンバーでさえも。」
音「え、メンバーでも?」
高橋「えぇ。グループの都合上、リーダーのJUNにだけ伝えてはいますが。
1人だけなら、もし週刊誌にリークされたとしてもすぐに誰がしたのか分かりますし…。
それほどまでに我々は秘密を大事に守ってきたつもりです。
もしも世間にバレるような事態になれば、全てがパーになってしまう。
MITSUKIの芸能生活も終わってしまうかもしれない。
けど、こんなにも外見と才能に恵まれたアイドルをここで終わりになんてしたくありません!
勝手ながらどうか、この事は墓場まで持っていくつもりで、秘密を守っていただきたいのです。」
高橋は深く頭を下げ、それに続いて光之と雅之も頭を深く下げた。
音「もちろん、そのつもりです!
昨日お話を聞いてから、その覚悟はできていました。」
雅之は嬉しいそうな顔で音を見つめるが、光之は複雑そうな表情で、未だに俯いている。
高橋「ありがとうございます…。
杉山さんを信じていないわけでは無いのですが…念の為SNSのアカウントもチェックさせて頂いてよろしいでしょうか…?」
雅之「は?そんな監視するような真似っ…!」
光之「…お前に怒る権利はない。それに口約束だけで済むわけないだろ。」
音「……大丈夫です。えっと…これとこれと……」
音はスマホを取り出して高橋にアカウントを確認させる。
高橋「…ほとんど見る専用で、投稿はしていないんですね…。別のアカウントも無いですか?」
高橋は念入りにチェックをし、音は正直に答えている。
雅之はもどかしそうに、両手の拳を強く握りしめている。
高橋「ありがとうございます。では、最後に今回のお詫びといいますか、お礼も兼ねて、こちらをお渡しします。」
白川「どうぞ。」
音の目の前に出されたのはgoalのライブチケットだった。