彼は推しと瓜二つ
MITSUKI似の男性客のカゴの中には、缶ビールが2つ入っている。
音と話し終えてから、目の前にあるレトルトカレーの中辛と甘口、5食入りのパックご飯をカゴに入れ、レジへと向かう。

音は男よりも先に歩き、サービスカウンターへと戻る。

その途中、男は後ろから話しかける。

男「今日はありがとうございました。
引っ越してきたばかりで、ここのスーパーは初めて来たんですけど、お姉さんがいるなら安心してまた来れそうです!」

音は一瞬ドキッとするが、振り返り、冷静に、落ち着いた声で返答する

音「そう言って頂けると、こちらとしてもありがたいです。」

音(…何か軽いなぁ……。MITSUKI君と見た目は似てても、やっぱり別人……)


レジの門倉は、MITSUKI似の男性客を気にする様子なく、淡々とレジを済ます。

門倉「ありがとうございましたー」

男はサービスカウンターの方を振り向いて微笑み、軽く会釈すると、早足でスーパーを後にする。

音「ねぇ、門倉くん。さっきのお客さん、加藤さんが怪しいって言ってたんだけど、何か気になる事あった…?」

門倉「え?いやぁ…俺は何とも思わなかったっすけど。」

門倉は亀を飼っていて、爬虫類にしか興味が無い。


音はやや呆れつつも、門倉だったからこそ、ここまで何事もなく済んだと思い安心する。


音(そういえばあの人、2人分買ってたっけ……。
引越しって事は同棲でも始めたのかな……。
いいなぁ、MITSUKIと同じ外見の人と暮らせるなんて…)




◯ビル街
とあるビルの一室


5人アイドルグループのgoalが、ローテーブルの周りに座って配信を行っている。

メンバーはクッションを抱えたり、まったりとした雰囲気で話している。

JUN「てか、もうそろ配信終わる時間だけど、MITSUKIまた全然喋ってなくね?!」

MITSUKI「あれ?そっかぁ。今日のKEIちゃんの漫談が面白過ぎて聞き入っちゃった。」


JUNはgoalのリーダー
KEIはgoalのセンター

KEI「いや、俺はネタじゃなく真面目に話してたつもりなんだけど!」

AKI「MITSUKI、質問来てるから答えなよ。『最近何か大きな出来事はあった?』だって。」

MITSUKI「うーん…最近…?何だろ………あ!最近は引越しした!」 


KEI「え?そうなの?どこ?!」

MITSUKI「えっとね…」

JUN「おい、生配信なんだからやめろ!!
MITSUKIならマジで言いかねん。」


KEI「ごめんごめん。じゃあ俺にだけ後でこっそり教えて?」


MITSUKIはニッコリして頷いた。
MITSUKI(絶対メンバーにも言わないけど…)
< 5 / 57 >

この作品をシェア

pagetop