シンデレラはちょっとばかしギャグに包まれている
大逆転のサヨナラ勝ち
「聞いたぞ、今日の出来事。花の父親から娘と連絡が取れないと本社の受付に連絡が入ったそうだ。」
「心配という名の探りですよね。私ごときが良い暮らしをしてるんじゃないかって。」
「まぁ会社に私が妻を迎えたという話はまだ公表してないしな。私の妻の座を狙う愚民は多いからその手の話は本社では慣れているんだ。」
「それでそう太さんをダミーにして、離婚歴やその度に子供をもうけるとかマイナスの噂をわざとに入れるんですね。」
「いや、その情報はそう太の事実だぞ?」
「……!?」
深夜に帰ってきた蒼真さんが少し疲れた顔をして、ウォークインクローゼットでスーツの上着を脱ぐのを手伝いながら会話をする。
「花……今日の治療はどうだったか見せてくれないか?」
通院しては、毎回蒼真さんが私の背中の傷の具合を見るのが日課になっている。蒼真さんが選んだ私の部屋着はネイビー色のナイトウェアランジェリー。
ロングの丈にスリップが入っている光沢の生地にもはや私の見た目はマダム。
これしか部屋着が無いなんてギャグかなって思った。スウェットって知ってる?あれ動きやすいよー?って蒼真さんに教えたのに微塵も認められなかったスウェット。
流石に毎日着ていたら慣れてしまったランジェリーに「赤もいいわね。」なんてマダム発言を言いそうになる。
蒼真さんが後ろからランジェリーの肩紐をスルリと外し、治療の経過をじっくりと見ていく。
「綺麗だよ、花。本当に綺麗になった。これで少しでも君の痛みが消えてくれたらいい。…あわよくば君を傷つけた家族ごと消し去り所だが。」
クリニックの監視カメラには集音マイクという物がついており、私達の会話の音声を拾って聞いたのかゴゴゴゴゴ……と効果音が出そうな程の怒りのオーラを出している。
「蒼真さん……いいんです。慣れているといったら変なのかもしれませんが、気にしていないんです。だってこんな私を気に入ってくださり、こんな私に怒ってくれる。私は幸せです。本当に、幸せなんで……す。」
「……花。」
露になった背中を丸め、継母達の日々長年やられてきた過去と、私の為に怒ってくれる蒼真さんがいることに様々な感情が高ぶり思わず肩を震えて涙が出てしまう。
生まれて来てすみませんと、言いたくもない言葉を何度言ったかわからない。
止めて、お願い、もうしません、ごめんなさい、何度言ったかわからない。
愛される喜びをいつのまにか諦めていた私が、産まれて初めて愛された体験の相手が蒼真さんで本当に良かった。
「I want to make love to you《君を愛したい》」
蒼真さんが後ろから私を力強く抱き締め、その指で流れた涙を拭ってくれる。
……蒼真さん、私も貴方に愛されたい。
その口で、その舌で、その腕で、その身体で私の全てを愛して欲しい。
……だって私、
今日新しいUN●QLOパンツ掃いてるの。