Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
兄の名前は大倉義昭(おおくらよしあき)、その妻の名前は麻美(あさみ)。二人は東京で魚屋を営んでいるそうだ。

二枚目の写真には、三人の男女が写っていた。体つきからして中学生ほどに見える。ポニーテールに髪を結んだ小柄な女の子を挟むように、ショートカットの気の強そうな女の子と背の高い優しそうな男の子が並んで立っている。健太郎が口を開いた。

「ショートカットの女の子はうちの娘の陽奈(ひな)です。男の子はお義姉さんと悟さんの息子の樹(いつき)くん。真ん中の女の子はお義兄さんと麻美さんの娘の華(はな)ちゃんです」

この写真は最近撮られたものではなく、七年前の元旦に集まった際に撮られたものだそうだ。写真に映った子どもたちは大人になっているだろう。

「どうして七年前の写真を飾ってるんですか?」

蓮が首を傾げながら訊ねる。その瞬間、優子は体を震わせて顔を覆った。その口からは嗚咽が漏れる。突然のことに二人は驚いた。健太郎が息を吐きながら口を開く。

「……華ちゃんは亡くなったんです。七年前に」
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