Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜

完成しないパズル

トリカブトの毒が原因で圭太郎が亡くなったことは、警視庁捜査一課にもすぐに伝えられ、優我と智也は容疑者として婚約者の咲良を怪しんでいる。彼女は圭太郎に近付くことができ、毒を盛れるチャンスも動機もあるためだ。

優我たちが咲良に事情を聞きに行っている中、紫月の姿は警視庁「未解決事件捜査課」ではなく、とあるマンションの一室にあった。

「ーーーということなんだが、どう思う？」

「何故そこまで詳しく話すんだ。あたしは警察関係者じゃない。捜査情報を漏らすのは立派な規則違反だろう」

紫月の目の前に座り、呆れた顔をするアノニマスはため息を吐いた。彼女の今日の服は、白いブラウスの上にマスタードイエローのリボンが三つついたサスペンダー付きのエプロンジャンパースカートを着ている。髪は栗色の三つ編みに黄色のバケットハットを被っている。

「お前は洞察力が優れているからな。何か思い付かないか？」

「犯人が圭太郎氏に毒を盛った方法か？」

「そうだ。ミステリー小説を書いてるなら色んなトリックがあるだろ？花嫁が花婿を殺害する話を書いたことがあったんじゃないか？」