Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「おはようございます！太宰さん！」

そう元気よく言ったのは、明るいふわふわとした茶髪に大きな目をした男性だった。グレーのスーツを着た彼は人懐っこい笑みを浮かべており、その背後には犬の尻尾が揺れているように見える。彼の名は夏目蓮（なつめれん）。紫月の部下だ。

「……何の用だ？」

ため息混じりに言った紫月の横を、「お邪魔しま〜す」と言いながら蓮は通って行く。おい、と紫月は止めたものの蓮はズカズカと踏み込んでいった。

「相変わらずシンプルな部屋ですね」

「余計なものに金を使いたくないんだよ」

「僕の部屋とは真逆ですね」

「お前は色々買いすぎなんだよ」

色も雰囲気も統一されていないゴチャゴチャとした蓮の部屋を紫月は思い浮かべた。蓮は気にする様子も見せず、テーブルの上に猫のイラストの描かれたエコバッグを置いた。

「何だそれは？」

「朝ご飯を作ろうと思って持って来ました！」

そう笑顔で言い、蓮はエコバッグの中身をテーブルに広げていく。パックに入った卵にほうれん草、味噌に豆腐などたくさんの食材に紫月は頭を抱えたくなった。
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