Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「事件の話をするなら他所でしてくれ。ここは捜査をする部署じゃない」

尚美にも睨み付けられ、紫月と蓮は渋々立ち上がり部屋を出る。廊下を歩きながら事件の話ができそうな空き部屋はないかと探したものの、捜査一課の刑事がどこも独占していた。やはり窓際部署にいる自分たちに警視庁での居場所はないのだと思わされる。

「気分転換にファミレスでご飯でも食べながら話しましょう!」

蓮の提案に紫月が乗った時だった。背後から「太宰さん!夏目さん!」と声をかけられる。二人が振り返るとそこには碧と彰の姿があった。

「事件あったんでしょ?今から聞き込み?」

彰の問いに紫月は「飯でも食いながら事件の整理をするところです」と答える。すると碧が「僕も行きます!」と手を挙げた。

「事件のこと、僕と谷崎さんにも教えてください」

「は?」

紫月は目を丸くする。「未解決捜査課」に所属しているこの二人はこれまで捜査に興味を示すことも、事件資料を見ることもなかった。目の前にいるのは本物の二人なのかと考えてしまう。
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