Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「太宰さん」

蓮が紫月の肩を掴む。その顔には笑みがあった。

「ーーーでは、みんなで行きましょうか」

紫月たち四人は警視庁を出てファミレスへと向かった。



昼時だというとにファミレスにいる人の姿はまばらだった。テーブル席に座り、それぞれ食べたいものを注文する。その後に紫月が事件の内容と解剖結果を彰と碧に教えた。彰がしばらく考えた後、口を開く。

「殺害の時間をずらす方法なら簡単じゃない?カプセルの中にトリカブトの毒を入れれば解決じゃん」

その言葉に紫月の隣に座る蓮が下を向く。実は彼も同じことを幸成の前で言い、否定されたのだ。紫月は幸成と同じ言葉を使う。

「残念ですが、その方法は不可能です。もしもカプセルを使えばカプセルが溶けた瞬間に毒が全身に周り、命を落とします。亡くなった後、胃の消化機能は停止するのでカプセルが胃の中に残ってしまう。だからカプセルを使うと解剖時にバレてしまうんですよ」

「そうなんだ……」

彰はまた考えこむ。しかしどう考えても答えは出てこない。
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