Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
捜査一課でもどのように毒を遅らせたのか捜査が続いていた。ベテラン捜査官である修二ですら行き詰まっている様子である。

「小説では毒殺のトリックはよく使われていますけど、実際に使うとなると不可能なものが多いですよね」

碧が顎に手を当てて考える。誰も何も発さない。しばらくすると従業員がやって来て、テーブルの上に頼んだ料理を並べていった。

「とりあえず食べましょうよ。お腹いっぱいになったら何か思い付くかもしれません」

蓮の言葉に紫月たちは頷き、箸やフォークを手に取る。その時「あら、刑事さんたちじゃないですか」と声をかけられた。顔を上げた先にいたのは、圭太郎が通っていた診療所の看護師である優子だった。

「新美さん。こんなところでお会いするなんて!」

紫月が少し驚きながら言うと、優子は「友達とご飯を食べに来ていまして。もう帰るところなんですけど」と笑う。

「刑事の皆さんとお食事ですか?」

「はい。今、圭太郎さんの事件について話していたんです」
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