Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
診療所でよほど彼は酷い態度を取っていたのだろうか。紫月がそう思ったその時、「あれ?太宰さん?」と声をかけられる。気が付けば目の前に真夜が立っていた。

「島崎、どうしてここに?」

「ご飯食べに来たの。今日は随分賑やかなんだね」

真夜がチラリとテーブルの方を見る。蓮はサッと目を逸らし、彰と碧は「どうも」と言いながら頭を下げた。真夜は紫月の方を向く。

「あのおばさん、事件の関係者なんでしょ?」

「ああ」

「暇だから調べてあげるよ」

真夜は紫月の返事も聞かずに隣のテーブルに座り、パソコンを取り出して素早くキーボードを操作していく。碧が「何者なんですか?」と訊ねるので紫月が説明をしていたところ、「できたよ!」と真夜が声を上げた。まだ五分も経っていない。

「早ッ!」

彰が驚きのあまり持っていた箸を落とす。紫月は真夜の隣に行き、パソコンの画面を見た。彼は優子だけでなく、夫である健太郎や宮沢夫妻と大倉夫妻についても調べてくれた。戸籍を確認したのだろう。そこに映し出された内容に紫月は驚く。

「これは……!」
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