Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
新美夫妻、宮沢夫妻、大倉夫妻は和歌山県水月町出身だった。七年前の地震の後、彼らは東京へ移り住んだようだ。しかしそんなことを彼らは一言も話していない。

「大倉夫妻には華っていう一人娘がいたみたいだね」

「ああ。七年前に亡くなっている。あの地震で亡くなったということだろう」

紫月の言葉に真夜は眉を下げた。パソコンのキーボードに触れながら言う。

「う〜ん。どうやら地震で亡くなったわけじゃなさそうだね。災害関連死みたい」

「災害関連死?」

それは災害が起きた後、持病の悪化や地震のショックから命に関わる病気を発症して亡くなることだ。華は何か持病を抱えていたのだろうか。

「持病があったかどうか、すぐに調べましょう」

蓮がそう言い、彰と碧も頷く。真夜はパソコンを見ながら言った。

「これはあのおばさんには関係なんだけどさ、地震が起きてしばらくした後、森和也が息子と一緒に水月町に行ったみたいだね。記録が残ってる。水月町に大金が振り込まれたのはそれからすぐのことだよ」

「そうか」
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