Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「いらん。何故お前に食事を管理されないといけないんだ」

「太宰さん、あの日から自暴自棄になって痩せちゃってるの自覚してます?食事をまともに取らなくなっただけじゃない。飛び降りようとしたり、毒を買おうとしたり、何度僕があなたの自殺を止めたと思ってるんですか」

蓮の目は心配そうに揺れている。それはまるで病気になった飼い主をベッドの近くで心配そうに見守る犬のようだ。紫月は乱暴に頭をかき、「シャワーを浴びてくる」と言い、風呂場へと向かった。



蓮の作った和食の朝食を食べた後、紫月は黒のスーツに着替えて蓮と共に職場である警視庁へと向かう。紫月の足取りは重い。そんな紫月の隣で蓮は鼻歌を歌いながら軽やかに歩いている。

「お前、よくそんな呑気でいられるな。今日から俺たちは花形場所から窓際場所にで働くことになるんだぞ」

「確かにそうですね。でも、もう決まってしまったことをクヨクヨしてても仕方ないじゃないですか」

そう言いながら蓮はニコリと笑いかける。紫月は後輩の無邪気な笑顔を見て、「俺を庇わなきゃよかったのに」と呟く。すると蓮が「何ですかそれ!」と頰を膨らませた。
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