Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
絵本から飛び出したような可愛らしい格好をした彼女の後ろには、町に住むお年寄りにスーツを着た女性が何やら説明をしていた。その隣にはTシャツにデニムパンツとラフな格好の青年がいる。その二人の顔には宮沢夫妻と新美夫妻の面影があった。

「間違いない。夫妻の子どもだ。しかし何故水月町に?」

『それなんだが、一つ聞いてくれないか?毒を遅らせる方法がわかったかもしれない』

アノニマスの言葉に、紫月は緊張を覚えながら「わかった」と頷いた。

『この方法が確かなら、早く捜査員をこっちに派遣してもらいたい。大きな悲劇が起きることになるかもしれない』

「一体どういうことだ?」

『犯人は……いや、犯人たちはカプセルを使って圭太郎氏に毒を盛った』

「それは不可能だと監察医が言っていたぞ」

紫月の言葉にアノニマスはため息を吐く。話を最後まで聞けと言われているようで、彼は口を閉じた。静かになったところでアノニマスが再び口を開く。

『毒はトリカブトだけじゃない』








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