Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「お前、頭おかしくなったのか?毒殺は状況的に見て宇山咲良にしかできないんだぞ。まさか超能力や魔法の類で殺したって言うんじゃないだろうな」

優我が小馬鹿にしながら紫月に言う。蓮が「そうですね。初めてトリックを聞いた時、僕も魔法みたいだと思いました」と口角を上げた。紫月は幸成が調べてくれたことを思い出しながら、夫妻たちに冷ややかな目を向ける。

「このトリックを成功させるには、一つの大きなポイントがありました。それはいかに自然に圭太郎さんに毒薬を飲ませるかということです」

「そんなの、言葉巧みに飲ませれば解決だろう?」

智也の言葉に蓮が首を横に振る。紫月は智也の方を見ることなく続けた。

「もしもそれまで病院に一つも通わず、健康体の人間が薬を飲んで亡くなるなんて不自然だと感じませんか?」

「確かにそうだな。薬に何か細工がしてあったんじゃないかと疑うのが普通だ」

修二が顎に手を当てて言う。人の心理を欺くために最初に動いたのは、屋敷で働く悟と朋子だ。
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