Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「宮沢さん。あなた方お二人は圭太郎さんの食事や飲み物に軽い毒物を仕込みました。お腹を壊したり、倦怠感を引き起こさせ、新美さんの診療所に通わせるために」

宮沢夫妻は何も答えない。次に新美夫妻を紫月は見つめる。優子は怯えたような顔を見せたが、健太郎は無表情だった。

「本来、診療所で手に負えないならば大きい病院で検査を受けさせるのが普通です。それをしなかったのは宮沢夫妻による毒物のせいだとわかっていたからでしょう」

最後に大倉夫妻を紫月は見る。二人は紫月から素早く目を逸らした。

「そして仕上げです。あなたたち全員は協力して毒薬を作り、結婚式当日の朝に圭太郎さんに飲ませました。そして彼は、あなた方の思惑通り結婚式の最中に亡くなったんです」

「不可能です!!あの人の死因はトリカブトでしょ!?即死する毒なのにどうやって毒を遅らせるっていうの!?」

優子が勢いよく立ち上がる。ガタッと椅子の倒れる大きな音が響いた。それを気にすることなく紫月は続ける。

「新美陽奈さんは製薬会社で働き、薬をご自分でも作られているそうですね。毒薬を作ったのは彼女でしょう。そしてトリカブトともう一つの毒を大倉さんと宮沢樹さんが用意した。あなたたちなら簡単に手に入るものです」
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