Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「簡単に手に入るもの?」

修二が首を傾げる。夫妻は全員顔を真っ青にしていた。もう言い逃れはできないとわかったのだろう。紫月は「フグですよ」と修二に言う。紫月を馬鹿にしていた様子の優我と智也の表情が固まった。

「フグ?」

「ご存知の通りフグには猛毒があり、扱うには免許が必要になるほど危険な魚です。大倉さんたちはフグ毒とトリカブトの毒を混ぜた薬を圭太郎さんに飲ませたんです」

体の中の神経や血管をダムだと想像してほしい。ダムは必要に応じて水の量を調節している。しかし強力な毒物が体内に入ると、水を出す機能・もしくは水を止める機能が停止してしまう。

フグとトリカブトはそれぞれ真反対の機能を持った毒である。そんな二つが混じるとどうなるのか。水を出す機能と止める機能両方が作動し、その間は何も起こらない。しかしどちらかの毒が先に切れてしまった場合、残った毒によって死が訪れる。

「あなたたちはこうして圭太郎さんを殺した。いや、まだ殺すつもりですよね?」

「一体誰を殺すつもりなんだ!?」
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