Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
修二で狼狽しながら訊ねる。これ以上同様の事件が相次げば警察の信用は地に落ちる。蓮が口を開きかけたその時、紫月のスーツの内ポケットに入れられたスマホが鳴り始めた。

「失礼」

紫月はスマホのスピーカー機能をオンにし、電話に出る。かけてきた人物は碧だ。

『太宰さん、間に合いました!水月町の住民からサプリを回収し、宮沢樹と新美陽奈から事情を聞いています。サプリは和歌山県警に持って行って毒が入っていないか解析してもらう予定です』

「ありがとうございます」

紫月はお礼を言って電話を切る。目の前に座る容疑者たちは何も言わない。会議室には重い空気が流れている。

「何で水月町とかいう町の人間を殺す必要が?」

智也が眼鏡に手を当てながら訊ねる。しばらくの沈黙の後、「……フフッ」と笑い声がした。麻美は肩を震わせ、狂ったように笑っている。

「あの町の連中は殺せなかったのね。まあいいわ。一番殺したい人間は殺すことができたんだから!」

「圭太郎さんに何の恨みがあったんですか?」
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