Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜

麻美の涙に紫月はアノニマスを思い出した。彼女は翡翠の心を守るため、最も残酷とも言える暴力に耐えてきた。生きているのに心が一瞬で死んでしまう暴力を。

「あいつがやったことはすぐにわかった。でもあいつもあいつの父親も金で解決しようとしたんだ！金を払うことで華ちゃんにした罪を帳消しにしようとした！」

宮沢夫妻が拳を握り締める。彼らを苦しめたのは加害者である圭太郎だけではなかった。あろうことか華がされた仕打ちを知っておきながら、町長や町に住む人たちは圭太郎を擁護したのだ。

「復活にはお金が必要だから」

「そもそもお宅の娘が悪いんじゃないのか？次期社長をたぶらかしたんだろう」

「そんなにあの二人を責めて、いくらほしいの？」

「我慢してくれよ。大人だろ？お互い大変だろ？」

心ない言葉のせいで華はどんどん衰弱していった。そして心臓が止まってそのまま命を落としてしまったのだ。

「あの子の死因は災害関連死なんかじゃない！！殺されたのよ！！」