Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
ほとんど小説を読まない紫月は馬酔木美空のことも当然知らず、どのような作品があるのかアノニマスが話すのを聞いた。馬酔木美空は翡翠より三歳年上で、高校生の頃に小説家デビューし、アノニマスが読んでいる小説は彼女のデビュー作なのだという。
「馬酔木の作品は全部で十三冊。一番有名なのは「アイビーと愛言葉」だな。女子高生と不思議な少年との恋を描いた作品で映画化の話もあったんだ」
「過去形だな。映画化はされなかったのか?」
「……ああ。あの子が事件を起こしてしまったからな」
「馬酔木美空と知り合いなのか?」
アノニマスはスマホを取り出し写真を見せる。そこにはおしゃれなカフェで撮られた自撮り写真があった。ピンク色のリボンがついた青い帽子を被り、繊細なレースが施された青と黄色の美しいドレスを着たアノニマスの隣に紫月の知らない女性が写っている。
花柄のクリーム色のワンピースを着た黒髪ショートカットの女性だ。アノニマスと並ぶとパッとした華やかさはないものの、両頬にえくぼが浮かんだ笑顔は可愛らしく、実年齢よりも幼い見えた。彼女が馬酔木美空なのだろう。
「馬酔木の作品は全部で十三冊。一番有名なのは「アイビーと愛言葉」だな。女子高生と不思議な少年との恋を描いた作品で映画化の話もあったんだ」
「過去形だな。映画化はされなかったのか?」
「……ああ。あの子が事件を起こしてしまったからな」
「馬酔木美空と知り合いなのか?」
アノニマスはスマホを取り出し写真を見せる。そこにはおしゃれなカフェで撮られた自撮り写真があった。ピンク色のリボンがついた青い帽子を被り、繊細なレースが施された青と黄色の美しいドレスを着たアノニマスの隣に紫月の知らない女性が写っている。
花柄のクリーム色のワンピースを着た黒髪ショートカットの女性だ。アノニマスと並ぶとパッとした華やかさはないものの、両頬にえくぼが浮かんだ笑顔は可愛らしく、実年齢よりも幼い見えた。彼女が馬酔木美空なのだろう。