Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「ふーん」

真夜は無表情で呟いた後、リュックサックの中からパソコンを取り出して何やら調べ始める。数秒後に彼は大きく目を見開いた。そしてパソコン画面から顔を上げる。

「ねぇ、東野美里って人この世に存在しないんだけど」

「は?」

紫月たちは驚きから声を出す。真夜のパソコンを紫月は慌てて見た。確かにその人物の住民票や保険証などの情報が一切存在しない。つまり、偽名だったのだ。

その時、「夏目さ〜ん」と言いながら一人の男性がこちらへ走って来る。刑事というより爽やかなスポーツマンと言った方が似合う警察官だ。捜査一課の人間より穏やかそうに見える。

「犯人の女は前科がありました!指紋がそいつと一致したんです!」

「誰だったんですか?」

蓮ではなく紫月が訊ねる。一瞬警戒の目を見せた警察官に警察手帳を見せると、彼は穏やかな空気をその顔に戻し、話を続けた。

「女の名前は暁風歌。梶井さんへのストーカーと傷害で逮捕歴があります」
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