Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜

顔を見られないよう、風歌はキャップ帽を深くかぶる。そしてなるべく地面に目を向けながら走っていた。その時である。

バンッ！

大きな音が響いた。刹那、自身の足に鋭い痛みが走る。何が起こったのか理解が追いつかない。

「う、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」

燃えるような痛みに思わずその場に倒れ、足に触れる。足からは血が流れていた。それを見て彼女はようやく気付く。自分が何者かに銃で撃たれたのだと。

「その宝石をどうするつもりだ？」

風歌の目の前に拳銃を持った男が姿を見せる。その男を顔を見た刹那、彼女の顔は痛みではなく憎悪で歪んだ。目の前の男は善人の皮を被った悪人だ。血で汚れた手を強く握り締める。

裏路地に再び銃声が響いた。