Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜

追跡

被害者である梶井庄之助に話を聞くために、紫月たちは大きな屋敷の中へと足を踏み入れる。鑑識はもう作業を終えたようで、姿はどこにもなかった。

（すごい家だな……）

家の廊下には、ギラギラとした金の装飾が施された額縁に飾られた絵や、宝石の入った置物などが置かれている。右を見ても左を見てもギラギラとした調度品ばかりで目が痛くなってくる。

「被害者の梶井さんは大手芸能事務所の社長です。だからこんな高そうなものばっかりなんですよ！」

蓮が紫月にコソッと耳打ちする。その芸能事務所の名前は紫月も知っている事務所だった。テレビでよく見かけるアイドルグループの多くが所属している。紫月が「なるほど」と納得していると、スーツの袖を引っ張られた。引っ張った犯人は真夜だ。

「何だ？」

「……ねぇ、あの人大丈夫なの？」

真夜はそう小声で言った後、チラリと後ろを見る。そこにはアノニマスがいた。彼女は暗い顔で俯きがちに歩いている。