Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
事件の犯人はかつてのアノニマスの友達だった風歌だとわかってから、彼女は口を閉ざしている。紫月は帰った方がいいのではないかと声をかけたものの、アノニマスは紫月たちに続いて屋敷の中へ来た。

(やはり、友人が犯人というのは多かれ少なかれショックだろう)

アノニマスのかつての友人は名前を捨て、顔も捨て、事件を起こした。

しかし紫月は友人知人が事件の容疑者だったことは一度もなく、どう声をかければいいのかわからない。下手な慰めはただ心を傷付けるだけだと紫月は思い、庄之助がいる部屋へと向かう。しかし頭の隅ではアノニマスの顔を忘れることができない。

(……クソッ!)

何故か胸の中に苛立ちが生まれていく。その行き場のない怒りはどこへ向かえばいいのか。紫月が困り果てたその時、ドンッと大きな音と共に「どうなっているんだ!!」と大きな怒鳴り声が響く。紫月と蓮は顔を見合わせ、声のした部屋のドアを開ける。

「失礼します!」

豪華な調度品に溢れた部屋の椅子には、顔を赤くした毛の薄い男が怒りを隠すことなく露わにしている。その近くには高そうな壺が割れており、それを見てスーツ姿の男が顔を真っ青にしている。捜査員の一人だろう。
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