Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
黒縁眼鏡に切り揃えられた黒い髪の智也は、誰もが知るメーカーのスーツを着ているものの、ピンと伸びた背筋や眼鏡というアイテムが仕事のできる雰囲気を出している。

「中原……志賀……」

一番顔を合わせたくないと思っていた人物に初っ端に出会ってしまい、紫月の顔が強張る。二人は紫月に近付くと、意地の悪い笑みを浮かべていつもの二倍はネチネチと絡んでくる。

「こんなところまで来てどうしたんだよ〜?お前、辞表出して刑事辞めたんじゃなかったっけ〜?」と優我。

「お前の面倒を見ていた人が可哀想だよな〜。教育した部下があんなことを起こすんだから!」と智也。

この二人には警察学校に通っていた頃から何故か絡まれ、衝突することが絶えなかった。普段は紫月も言い返しているのだが、今は何故か何も言うことができず、二人の言葉を拳を握り締めて耐えていた。

「ちょっと中原さんと志賀さん!やめてください!」

蓮が止めに入るも、二人は「太宰を庇った無能部下かよ」と蓮のことも馬鹿にし始める。紫月が殴り掛かろうと拳を振り上げたその時だった。
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